夜尿症(おねしょ)
5歳以上のお子さんで月に1回以上のおねしょが3か月以上持続した状態を医学的に夜尿症と呼びます。
夜尿症は5歳では15%、7歳では10%、10歳では5%、中学生で2~3%、高校生で1%と報告されています。
病気という認識が薄い症状であるため、わざわざ病院に相談に行こうとは思われていない方も多いのではないでしょうか。成長とともに自然に治っていく可能性もありますが、小学校低学年のうちに介入を始めた方がおねしょの消失が早いと言われています。お悩みの際はお気軽にご相談ください。
治療の流れ
初回受診
症状や既往歴などの問診と診察を行い、夜尿症の治療に悪影響を与える便秘がないか、また腎臓に異常がないか腹部超音波検査を行います。この時点で便秘症があれば便秘症の内服治療を開始します。また夜尿症に対する一般的な生活指導も実行していただきながらおねしょの日記を書き始めてもらいます。
詳しくは「夜尿症の生活の見直し」を参照ください。
2回目の受診
初回受診の2週間後に当日の早朝尿を持参していただき、尿検査を提出します。
3回目の受診
尿検査の結果を説明します。生活習慣の改善のみで夜尿が明らかに減少した場合を除き、薄い尿が出ている場合には夜尿症の治療薬であるミニリンメルト@を開始します。
ミニリンメルト@内服開始後は副作用の出現を抑えるために「デスモプレシン(ミニリンメルト@)について」の注意点を守ってもらいます。
初回量を開始してから最初の3か月は2週間毎に、3か月以降効果が安定していれば1ヶ月に1回の診察と処方を繰り返していきます。
治療効果の目標として内服薬開始後1年でおねしょの回数を半分以下にすることを目標にしますが、個人差もあります。1~2年間の治療で満足のいく治療効果が得られない場合には総合病院の夜尿症専門外来に紹介させていただきます。
デスモプレシン(ミニリンメルト@)について
デスモプレシンとは?
脳の脳下垂体という部分から、バソプレシン(抗利尿ホルモン)という尿の産生を抑える作用を持つホルモンが分泌されます。バソプレシンは、腎臓に作用し、水分の体内への再吸収を促すことで水分バランスの調整を行います。つまり体に水分を戻し、濃縮された尿が排泄されるように働きます。
デスモプレシンはバソプレシンの誘導体から作られたお薬です。日本では2003年に点鼻スプレーが、2012年からは口腔内崩壊錠が夜尿症のお子さんに対して使えるようになりました。
デスモプレシン治療の適応は?
夜尿症のお子さんでは、夜間のバソプレシンの分泌が少なく希釈された尿(薄い尿)がたくさん産生されてしまうことがあります。そのようなお子さんでは、夜間の尿産生を減らす目的でデスモプレシンの治療が適応になります。
ミニリンメルト@について
ミニリンメルト@はデスモプレシンの商品名です。口腔内で溶けてなくなる、ラムネのような錠剤です。
副作用である水中毒発現の危険性が低いことが言われており、夜尿症のお子さんで使用するお薬です。
ミニリンメルト@120μg、240μgの2種類が保険適応ですが、最初は120μg製剤から開始します。
治療効果をみて同量を継続するか、増量するか、中止するかを判断します。
ミニリンメルト@の使用方法
就寝前に1日1回内服するお薬です。
夕食後、すぐに内服をすると効果が弱まると言われているので、夕食後少なくとも1時間以上あけることが推奨されています。
苦味がありますが、すぐに飲み込まず十分に口腔内で溶かしてください。
ミニリンメルト@内服時のお約束
副作用として、水中毒、低Na血症があります。体内に水をとどめるお薬ですので、多量の水分摂取は副作用発現の危険性が高まるため以下の約束をしっかり守って下さい。
- 夜間に過剰な水分摂取をした場合は、その日のミニリンメルト@の服用を中止すること
具体的には、服薬1時間前の飲水量は200ml以内を目安に - 具合が悪いときはその日の内服はやめること
発熱時、頻回の嘔吐や下痢 - 激しい運動時はその日の内服はやめること
夜尿症の生活指導
生活の見直し
- 早寝、早起き、規則正しい生活をしましょう
- 塩辛いものはなるべく食べないようにしましょう
- うんちをしっかりしましょう(朝ごはんのあと、トイレに座りましょう)
- 寝る前には必ずトイレに行きましょう
- あったかくして眠りましょう
- 夜間は無理にトイレに起こさないようにしましょう
水分摂取について
摂取した水分の80%は3時間後には尿となって排泄されると言われています。日中の水分摂取は必要以上にとる必要はありませんが、我慢しすぎる必要もありません。
- 夕食後の水分摂取はコップ1杯が目安です。
- 少なくとも就寝2時間前、理想としては3時間前には夕食と最終水分摂取を済ませましょう。
排尿について
- おしっこをするときは力を入れずに出しましょう
- 便座に座ってする場合は足を床につき、腰を浮かせたりしないで出しましょう
便秘について
夜尿症のお子様で便秘を合併している場合、便秘の改善をすることで夜尿症もよくなることが報告されています。
朝起きたらコップ1杯の水をとり、朝食後30分-1時間くらいでトイレに座って排便しようとする習慣をつけることが理想です。
便秘症
便秘とはうんちの回数が減ったり、1回に出るうんちの量が減ったりしてお腹の中にうんちがたくさん貯まった状態をいいます。お腹にうんちが貯まっただけではすぐに症状が出るわけではなく、その状態で嘔吐やお腹の痛みなどの症状が出て初めて、便秘症という診断になります。便秘症は意外に多くのお子さんで見られ、診断されたお子さんの保護者の方は毎日うんちが出ていると申告されることをよく経験します。離乳食やトイレットトレーニングの前後や小学校入学後に便秘症の症状が出る場合が典型的ですが、お子さんが小学生くらいになるとうんちはちゃんとしているのか把握しなくなるため、仕方がないことだと思います。
主な症状
便の回数が減る(週2回以下は明らかに少ない)、お腹が痛い、嘔吐する、うんちをする時におしりが痛い、兎の糞の様な小さいコロコロしたうんちが出る、下痢(便秘と矛盾すると思われるかもしれませんが、硬いうんちがたくさん貯まるとうんちが出にくくなり、硬いうんちの間をすり抜けるように少量のうんちを下痢のような形で出すようになり、慢性化した便秘の症状の1つです)。
検査
便秘症を疑った場合にはお腹の超音波検査を行う場合があります。
治療
まずは食事内容や離乳食の進み具合などを確認したうえで、排便日誌(うんちのーと)を書いてもらいます。1歳くらいまでのお子さんは綿棒浣腸などの対症療法から始めていきます。
2歳以上のお子さんではおしりの近くに硬いうんちがある場合には浣腸を行い、硬いうんちを少しでも少なくしていきます。それと並行してモビコール®というお薬を開始して柔らかくて出しやすいうんちになるように内服薬を調整していきます。
便秘症としての治療は、約半数のお子さんが2年後も通院が必要と言われており、ゆっくりと経過を診ていく病気だと考えてください。
合併症
ヒルシュスプルング病⇒便秘の合併症ではありませんが、難治性の便秘を引き起こす有名な病気です。なかなか通常の治療に反応しない便秘症では、元々便秘症になりやすい基礎疾患がないか検査する必要がある場合があります。程度の強い便秘症では検査や治療の出来る病院に紹介を行います。